
2008/03/10
▲入社以来20回の異動を経験して、現在は本社経済本部のデスク
私が結婚したのは川崎支局にいた42歳の時。
翌年、本社異動となってひと月後に上の子が生まれました。出産を機に妻が仕事を辞めたのと、私が部署を移ったばかりだったのとで、その時は育児休職をまったく考えなかったですね。
しかしさらに年子が増えることになり、二人とも実家が遠いし、子育ての大変さを見ていて妻だけでは難しいんじゃないかと思ったんです。もうひとつの理由としては、その時、私はもう45歳。40歳を越えたらサラリーマンはだいたい先が見えてくるでしょう(笑)、これからは家庭中心に考えていこうと。同じ部署の後輩記者が取得第一号なので身近に感じていたこともありましたね。
▲若手の記者時代とは違って、早朝や夜、休日の勤務はあってもあらかじめローテーションで決まっているためそれほど不規則ではない
周囲は思った以上にすんなり受け入れてくれました。
GW明けに人事部へ聞きにいったら、4月に拡充した育児休職制度が活かせると担当者がすごく喜んでね。直属上司も非常に理解のある人だったので、嫌な顔ひとつせずに賛成してくれました。
育児休職を決めるまで妻にはいっさい言わなかったんですよ。喜ぶと思ったら意外にも複雑な表情を浮かべてね。「確かに助かるけど、あなたの会社での立場が心配」だと。その時は半ば冗談、半ば真実を込めて「立場はこれ以上悪くなりようがない」(笑)と開き直ったわけです。
申請してみてわかったのは女性と男性の違い。女性は予定日が近づいたら産休からそのまま休職できますが、男性の場合は出産翌日から休みが始まるので生まれるまでわからない。そうすると日々の仕事がどんどん限られてくるし落ち着かないわけです。それを人事部が察したのか、予定日の前から有給休暇を使って休みに入るよう提案してきてね。しかしタイミングが悪いことに、有休前に担当していた東京証券取引所で社長が辞意を表明する事態に発展。部長に頼まれ、夜タクシーで関係者の自宅に取材へ。
後でわかったのは、その日妻はそろそろという予感があったのに「まだ大丈夫だから行ってきて」と言ったこと。たまたま早く終わって帰り、日付のかわった深夜に陣痛がきて生まれました。もし間に合わなかったら…と思いましたね。
休職中は上の子の面倒を見るのが私の仕事で、毎日散歩に行ったり昼寝をさせたり。でも公園に行くと近所のお母さんたちがどこかぎこちないんです。
ある日、子育て関係のテレビ番組を観ていたら「公園で平日子どもを遊ばせているお父さんを見ると、リストラされたのかと思って声をかけづらい」と。「これ私のこと?」と言ったら妻がうなづいた(笑)。平日に毎日見かける男性が珍しいから、育児休職と考えるよりクビになったと思う方がむしろ自然なんですね。
男性が育児休職をしない理由のひとつは収入のダウン。
会社によっては給与を出さず、国の給付金しかもらえないこともあります。うちの社の場合は給与の5割が出て給付金が3割、復帰給付金というのがあと1割分出るので全部足すと9割になるはずだったんですよ。
しかし実は月42万円という上限があって、それを基準に5割とか3割と計算される。さらにボーナスもその年の昇給額もカット。収入面はあらかじめよく知っておかないとね。
また当然、将来的に不利になるのではと考えてしまいますね。一番大事なのは社内での自分の立場をどう考えるか。私は働き詰めの一時期に、まとまった期間を子どものことだけ考えて過ごすことは、今後のリフレッシュにもつながると思うんです。
▲母親が上の子を幼稚園に送り届ける間、家にいて下の子の面倒を見た後に出勤。ドアtoドアで1時間かからないところに住んでいるからできるとか
企業も政府も“ワーク・ライフ・バランス”を唱え始めています。
例えば、次世代法(次世代育成支援対策推進法)では、企業認定条件のひとつが一定期間内に男性の育児休職者が一人いること。一方で厚生労働省の調査だと、2005年度の男性の育児休職取得率は0.57パーセント。実際のところはかけ声とは裏腹という現状です。要は長い不況で採用を押さえたことにより、30代の人たちに過重労働がかかっている。これからはむしろ、ますます取りにくくなるんじゃないかと思います。
ただ育児休職だけが子育てというわけではなく、その後何年も続けていくことですから。休職の一時期以上に、継続して働きながら助けることが重要だと思いますね。
原口 和久さん (はらぐち かずひささん)