
2008/08/13
▲日中は子どもを見ながら環境教育スタッフとして働く舟津さん。くったくのない笑顔で大らかな子育てを実践中です
私が働いているのは、富士山の環境保全活動をしているNPO。
通常は、朝の8時半に主人と子どもと三人で事務所に来て働き、夕方に帰ります。 地元の保育園が3歳からなのと、事務作業ばかりではなく融通がきく仕事なので、ある程度この状況を許していただいているんです。 子どもを連れての勤務は、ほかの職場ではなかなか難しいと思いますね。
私たちのやり方は昔でいうところの、農家の人が畑に子どもを連れていく感覚。 この子もわりと手がかからなくて、こうやってひとりで遊んで疲れたら寝てくれます。
また、家では主人が遊び相手をしてくれるので、一日中いっしょにいても苦にならないんですよね。
▲富士山の環境活動における実習拠点であり、情報発信基地でもある「富士山クラブ もりの学校」。2002年8月に開校し、校長はアルピニストの野口健氏が務める
一方、私たちが住む河口湖周辺には、託児できる場所がほとんどない、という事情もあります。
いちばん近い施設でも、ここから車で約1時間かかり、連日預けられるのは2歳からなんですよ。
子育てNPOもがんばっているのですが、山梨県自体がファミリーサポート制度の検討を始めたばかりで、まだ稼働していない、というのが現状。
▲左側が玄関。右奥が広い講堂で、不使用時は和秋くんのあそび場兼寝室にも
先月も子連れでは無理な仕事が急に入って、預け先を町に訊ねてみたり、千葉に住む親に来てもらおうかと考えたりして、すごく困りましたね。
ただ、観光地なので若い人が多く、出生率や人口増加率はいいほうだから、これからは保育施設が増えてもおかしくないと思います。
うちのまわりだけでも、同じ月に生まれた子が10人もいるんですよ。
▲まるで手がかからないという和秋くん。夜中の授乳も複数回飲ませたのは退院して一週間だけ。ひどく体調が悪いこともまだ経験していないとか
妊娠中にはゴミマップの調査というのをやっていました。
それは携帯電話とGPSを持って、富士山周辺に不法投棄のゴミがないかを探す仕事。一日10km弱くらい歩いていたんですよ。 出産の2日前にはもりづくりの仕事をして、大きなお腹で木を運んでいましたね。
子どもが生まれたのは、たまたま主人の講演会の日。
仲よくなった産院の先生や看護士さんが、「旦那さんがあんなに楽しみにしていたんだから、戻るまで産むのを待って。」と言うんです(笑)。
我慢していたんですが、「すみません、もう無理です」と言ったとき、降りてきたのがよくわかりました。 数回いきむとでてきたので、分娩室に入ってからの時間は20分くらい。 私が産んだというよりも、この子が自分の力で生まれてきたという感覚でしたね。
それから間もなく、二週間後の清掃活動イベントに赤ちゃん連れでいったのが私の仕事復帰。 ずっとバンの荷台に転がしていましたが(笑)。 この4~6月には約2,500人が訪れ、何百人もの方が、うちの子を抱っこしてくれました。 私が抱っこしなくとも、誰かしらがこの子を抱っこしてくださって。 ありがたいなと思います。
自分が母親になってもやっぱり理解できないなと思ったのは、道端に紙おむつを捨てること。
清掃活動では触った瞬間、ぶよっとするので、ビニール袋の上からでも「ああ、おむつだ」とわかるんです。
確かに臭いから車の外に捨ててしまえばラクだとは思うんですが、結局は子どものせいになるようで、恥ずかしくてできないですよね。 出産後は、そういうことがリアルに感じられるようになりました。
私たちは環境問題に取り組んでいますが、24時間すべてがエコというわけじゃないんです。 ただ、身のまわりで続けられるものを見つけて、やっていこうとは思います。
子どもも普段の生活の中で、あいさつをしたり、お友達をつくったりといった、あたりまえだけれども大切なことができるようになればいい。 その上で、さらに自分のやりたいことが見つかれば最高かなと思います。
少なくとも私たちは見つかったので…。
▲結婚式もここ、もりの学校で。スタッフ内の神主さん、司会者も引出物もすべて仲間うちで調達。校庭にホテルのケータリングを呼んで披露宴
現在は、「環境教育スタッフ」という、クラブが認定した40名あまりのメンバーのひとりとして活動しています。 コアスタッフとは別に、清掃活動や子どもの体験活動での指導と安全管理をするのが仕事です。
ところで私たちは、スタッフ内で結婚して子どもを産んだ初めての例なんですよ。
NPO活動をしている同世代でも、メインの収入を得ながら子育てしている人は、ほとんどいないと思うんですね。 まだまだ確立していない分野なので、結婚するときには、ふたりで「絶対離婚できないね」という話をしました。
つまり、環境活動というのは、自分たちだけでは決して完結しないこと。 だから職業として整備がなされて、私たちが特別ではないことを次の世代に見てもらえれば先に繋げていけるはず。 子どもがいる人もいっしょにここで働ける、それが「富士山クラブ」のスタイルになればいいなと思っています。
舟津 章子さん (ふなつ あきこ)